【理屈と感情のせめぎ合い】

保証協会からの専門家派遣で、春からあるEC販売会社をご支援しています。「ここ2~3年大きく売上は伸ばしているもののなかなか赤字から脱却できない」とのお悩みでした。過去の決算書を拝見すると① 売上額の40%弱に当たる金額の過大な宣伝広告費 ② 売上額の10%以上に当たる配送費を、顧客獲得の為「全額自社負担」としている ③ 材料の不稼働在庫が多く計算上440日ほど経過しないと資金回収出来ない状態、 などなどの問題点が分かりました。更に頂いた決算書から損益分岐点分析を行うと直近の3年は変動費率が1以上、つまり売上を1増やすのにそれ以上の費用が発生している状態で有り、売上が増える度に赤字がそれ以上拡大する状態である事も判明。
宣伝広告費削減については頑なに拒否されたので、最初に社長にご提案したのが a) 配送費分だけ値上げすること b)資金繰り表の作成、の2つ。a)ができれば、ちょうど赤字金額分が回収出来て営業利益がほぼ±0に改善出来る計算でした。またb)によって、これまで全く気にしていなかった経費が毎月どれだけ掛かっているかが「見える化」されます。
社長にそれぞれの提案理由やその効果等をご理解頂いて「月々の資金繰表作成と、タイミングを見て近々値上げします」とご回答頂いたのが4月半ば。それから2か月が経過しましたが未だに販売価格は変わりません。
先週の訪問時にその理由を聞いたところ「売上が下がるのが怖い」とのご回答。かと言って宣伝広告費の削減も同じ理由で依然拒まれています。悪戯に説得しようとしても頑なになられるだけなので、例のブロックパズルを使って改めて「頭の体操」をして頂いたところ、「粗利が必要なのは理屈では分かるんだけど、心配なんだよね」とのこと。更に何が心配なのかを掘り下げて聞いてゆくと、やはり資金繰り表も作成しておらず「どれだけのお金が手元に無いと支払いに困るのかが分からず不安」とのご回答。改めて資金繰り表のフォーマットを見ながら、作り方をご説明しつつ、分かっている範囲内で今月の売上/支払予定を記入して頂き、続きは来月半ばの訪問時に確認させて頂く事となりました。
次が5回目の最終訪問となりますが、「理屈と感情のせめぎ合い」結果がどうなるか見ものです。